最後の犬伏は誰なのか?


最後のシーンでの犬伏は、どう見ても本来の犬伏景子の人格である。
ならば、本物の涼蔭穂鳥の意識は雪山の下なのであろうか……?

このページの考察は、あり得る可能性の一つである。


 雪崩に巻き込まれたのは穂鳥?
サトル編7日目、雪崩のシーンの犬伏は涼蔭穂鳥の面影が残っている。

確かにこの時の彼女は声が出せる。
だが、雪崩に飲まれた後、彼女は放心状態に陥ってしまう。
こころの問いかけに対して無言のまま、うなずいたり首を振ったりして受け答えだけしているのだ。
この行動は穂鳥のものなのではないか?


 雪崩前後の人格は?
整理して考えてみよう。

まず、1月17日午前4時48分スフィアが朱倉岳に転移する。
この時、犬伏達は意識の残留、つまり人格交換をしたのだ。

通常の転移のように、犬伏の肉体に朱倉岳にいる穂鳥の意識が入り込む。
犬伏の意識は青鷺島に転移してきた白い地下施設にあることになる。だが、ここにはもう憑依する肉体はない
このため、この33分間、犬伏は意識だけの存在になっていたのだろう。

そして穂鳥達は朱倉岳の雪崩に巻き込まれる。
穂鳥の声が出たのは、彼女が失語症から回復したからだろう。
この時に彼女が喋る回数は3回しかないので確証はもてないが、声の調子が犬伏のそれとは多少異なっているように感じられる。

雪崩の後、そのショックにより皮肉にも穂鳥はまた失語症に陥ってしまうのだ……。


 意識ごと転移?
以上の間にも転移は繰り返されるが、サークル外にいるため穂鳥の意識はそのまま犬伏に宿る。
犬伏の意識は満足に肉体に憑依できないまま青鷺島に留まっている。

そして、穂鳥は朱倉岳に転移してきたスフィアに歩いて戻ってくる。
この次の転移で、スフィアは穂樽日へと転移する。

だが、穂樽日にはもう誰の意識も残っていない。
このまま穂鳥の意識が残留したまま転移が起こったら、犬伏の肉体は空になってしまう。
肉体が空になるのを防ぐために、このときだけは穂鳥の意識も転移したと考えられる。

現に、悟やこころは意識が空になった犬伏の肉体を見ていない。
穂鳥は部屋にこもっていたので、たまたま見かけなかっただけ、なのかも知れない。
でも彼女は、凍傷を防ぐために黄泉木の指示を受けていたり、重傷の黄泉木やこころの面倒を見ていたりしていたと思われる。
33分間部屋にこもったままだったというのは少し不自然であろう。

最後に、スフィアが青鷺島に転移する。
このときも穂鳥の意識は残留しなかったと考えられる。

もし、穂鳥の意識が残留してしまったら、穂鳥は意識だけの存在になってしまう。
『でも犬伏だって最初に意識だけの存在になったじゃないか』、と思うかも知れない。

だが、それが許されたのは彼女がプレイヤーの意識の一部だから。
穂鳥はプレイヤーの意識とは直接の関係はないのだ。
プレイヤーと直接関係ない彼女の意識が、意識だけの状態で世界に留まるのは不自然だ。

だから、穂鳥の意識は犬伏の肉体ごと転移することとなった。


 犬伏+穂鳥
また、スフィアが青鷺島に戻ってきたとき、残留していた犬伏の意識は犬伏の肉体に戻ろうとするだろう。

でも、その肉体には穂鳥の意識がある。
穂鳥がいたとしても戻らないわけにはいかない――元々DIDだった彼女は、穂鳥の人格を犬伏の肉体に取り込んでしまったのだ。

そしてこれ以降、転移は発生しなかった。

残った犬伏は、犬伏本来の人格と涼蔭穂鳥の人格が混在することとなったのだ。
これからは本来のDIDのように、普通に人格の入れ替わりが起こるのだろう。

穂鳥は、肉体こそは失ってしまったものの、その意識は生き延びることができたのだ。

これを信じるかどうかは個人の自由。
だけど論理的に証明できないことなら、ロマンチックな方を信じたいよね……?


 BACK HOME