第3の人格αの正体



 第3の人格αとは?
復習の意味を込めて第3の人格αについてまとめてみよう。

サトル編プレイ中、転移の度に違和感を覚えたプレイヤーは多いだろう。
意識がこころから悟へと変わる間に『空白の時間』があり、その間は別の人物がこころや悟の肉体を操っているのではないか……。
このように推測できたプレイヤーも多かったことだろう。

そして、それは3点間転移によって説明された。
朱倉岳でもなく青鷺島でもない第3の地点にそのαは存在したのだ。

以降、そのαについて考察していく。


 αの起こした行動
αは以下のような行動を起こしている。

  • 1月11日 避難小屋:叫び続ける。その様子はサトル編から垣間見れる
  • 1月11日 スフィア:鏡を見た直後から暴れ出す。結局鎮静剤を打たれ事なきを得る
  • 1月11日 避難小屋:手に持った新聞をビリビリに破って暴れる
  • 1月12日 スフィア:こころが描いたイラストの上から滅茶苦茶に落書きをする
  • 1月12日 避難小屋:黄泉木のナイフで指を怪我する
  • 1月12日 スフィア:自らの左腕を傷付ける(注:別の人物による行為の可能性も高い)
  • 1月12日 避難小屋:ボイスレコーダーの録音スイッチをオンに。雑音のみのDATA3が作られる
  • 1月13日 スフィア:犬伏のベッドに潜り込む
  • 1月14日 スフィア:手に持ったナイフで榎本を殺害。戯れるように何度も刺す
  • 1月15日 スフィア:何のためらいもなく、MAO阻害剤と幻覚剤DMTを飲む
  • 1月15日 避難小屋:こころに預けた食糧を全て食べてしまう(進め方によっては発生しない)
  • 1月15日 スフィア:ゆにを殴り、リビングで大暴れ。内海が抱きかかえることで静まる
以上に共通することは、目的が不明であること。
悪意を持った人間のやることにしても、納得できない点が多すぎるのだ。


 第3地点
αの正体を暴くためには、第3地点について明らかにせねばならない。
3点間転移における、隠された3つめの場所。
それは、北海道妃羽郡茂枝村――穂樽日。

穂樽日は朱倉岳と青鷺島のちょうど『中間』の位置にある。
ならば、この穂樽日は何年何月なのだろうか?

朱倉岳は2011年1月。
青鷺島は2012年1月。

そう、穂樽日の年月は、2011年1月と2012年1月の中間、2011年7月なのだ。

サトル編7日目、悟は第3地点に足を踏み入れる。
そこには純白の建物があった。
建物は地下へと通じており、そこは真っ白な部屋がある。
その部屋には、黒いサッカーボールより少し大きめの時空間転移装置があり、そして空っぽのベッドが一つ。
悟がここに来た時の日付は、2011年7月18日――サトル編7日目だ。

いつか内海が言っていた。
内海は精神に異常をきたしたため、2011年7月16日まで施設に収容されていたという。
地下の狭い個室に一人きりで。

そして、また彼女は教えてくれた。
その施設は、北海道妃羽郡茂枝村――穂樽日にあったと。

そう、穂樽日にあった施設には内海がいたのだ。


 Who are you?
2011年8月に内海は双子の赤ちゃんを出産した。
出産1か月前まで、彼女は穂樽日の施設で過ごしていた。
そして内海は知る由もないが、2011年7月12日から18日までこの施設は時空間転移に巻き込まれていたのだ。

内海はこの施設には一人きりでいたという。
ならば、第3の人格αの正体は――内海?

いや、違う。
いくら精神に異常をきたしていたとは言え、内海がαと考えると行動に不自然な点が多すぎる。
それにαが内海なら、こころや悟の意識が穂樽日の施設にある時、そのときの事を何も覚えていないのはおかしい。

内海ではないとすれば、αは一体誰なのだろう?

ここにひとつの論文がある。

乳児の『疳の虫』はなぜ起こるのか?

一説によると、赤ん坊はその鮮明な意識とは裏腹に、肉体を上手く操ることができないため、激しいストレスを覚え、いらだち、泣き叫ぶのではないかと言われている。
このため、大人には訳もなく泣いているようにしか見えない。

赤ん坊に、意のままになる肉体を与えたら、冷酷な殺人気になるだろうという医学者もいる。
(彼女)は人間社会の道徳を学んでおらず、本能のままに殺戮を繰り広げるだろうというのだ。
えてして幼児とは残酷なものである。少しのためらいも見せずに生き物を平気で殺すことができる。
それも遊戯の一環として、彼らは行なう。


そう、αの正体――それは内海のお腹の中にいた胎児だったのだ。

悪意もなく、だが良心もない存在。
そんな胎児に物語は翻弄されていたのだ。
サトル編エピローグで、悟が彼らに対する感想を暗に述べている。一度読んでみるといいだろう。


 赤い夢
ココロ編、サトル編で時々目にする赤い夢の光景。
安らぎに満ちた海をゆらゆらと漂う恍惚感。
そしてここが世界の全てのような支配感。

これは内海のお腹の中の様子を語ったもの。

そう、胎児になれば物を見たり聞いたりすることはほとんどできず、身体を自由に動かすことなんかできない。
考える脳すら満足に与えられない。
だから、こころや悟は穂樽日の施設にいた時のことをほとんど覚えていないのだ。

さて、この赤い夢は『何か』に似ている。
直接見ることも聞くことも触ることもできない。
でも、世界の全てを支配しているような感覚。
それは――?


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