なぜ意識が残留したのか?



 こころと悟は例外
榎本は、時空間転移の際、こころと悟の意識は例外的に場に残ると言った。
だが、その理由は最後まで不明のままだった。
しかも、榎本は意味深にその理由をはぐらかしている。

これは、『物語の都合』で済ませられる問題ではないだろう。
何か理由があるのだ。

こころや悟には大きな共通点がある。
彼らの意識はプレイヤーが介入していたという共通点が……。

時空間転移はサークルに含まれる全てのものをごっそり転移する。
人の意識も脳がつかさどるので、脳が転移してしまえば、意識も転移する。
だが、『オレ』や『ワタシ』の意識は……プレイヤーの意識はどうなのだろうか?

そう、意識が残留したのはその意識がプレイヤーのものだからであるのだ。
こころの意識は完全にプレイヤーが支配していたわけではないが、プレイヤーと一緒に残留したと考えるのが自然だろう。

転移時のムービーに浮かび上がる "Self" の文字も、その裏付けとなるだろう。(ちなみに、Self=プレイヤー)


 αの意識は?
それでは、胎児であるαの意識は、なぜ残留したのだろうか。
悟やこころがα肉体にいるときに見た赤い夢の中では、安堵感と同時に、支配感を抱いていたという。

これは、絶対的で虚無の存在であるプレイヤーの立場に類似しているのではないか?
これが原因でαの意識も残留したと考えるの自然だ。


 意識の転移は意思で決まる?
転移の度にこころと悟の人格が替わっていくはずなのだが、7日目だけは、転移しても人格が変わることはなくなってしまった。

この理由として考えられるのは、『転移先に肉体がなかったから』だろう。
7日目の転移の時点で、悟は既にサークル外、αも内海が既に穂樽日を去っているためサークル外。
このため、人格(意識)が残留することがなくなったのだと考えられる。

だが、これには別の解釈も考えられる。

サトル編で彼はこう思っていた。
オレがサークルの外に出ればこころはもう人格交換しない、と。

彼はそう思い込んでいたのである。
思い込んでくれたおかげで、こころの意識残留が起こらなかったのかも知れない。

プレイヤーの意識が残留するかどうかは、プレイヤーの意思が大きな決定要因になるのではないだろうか?
転移時には肉体から意識が剥脱されるため、通常よりもその意思は大きく影響するのだと考えられる。

既に説明した胎児の意識残留の件も、プレイヤーが介入していたからこそ起こった賜物なのだろう。


 コーヒーの味の残留
榎本が行なった、ブラックコーヒーとミルク入りコーヒーの交換実験における『概念(味)の残留』も、プレイヤーの意思が大きく関わった。
悟は言葉巧みな榎本にだまされ、転移しても概念(味)は残っていると決め付けた可能性がある。
実際には、もしっかり入れ替わっていたのにもかかわらず……。

『オレ』の感じる味を、『オレ』が決めてしまったのだ。


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