悟を溺死させようとしたのは?


サトル編1日目、悟はバスルームで溺死させられそうになってしまう。

もっとも、こころの意識が睡眠薬を飲んだせいで起こった、自業自得のことなのかもしれない。
だが、その裏に奇怪な行動をとった犬伏の存在があり、さらに睡眠薬を飲まなかった場合は本当に死んでしまう。

どうにも不可解な点が残る。

これらのことについて整理して考えてみることにしよう。


 状況整理
監視カメラでの情報を含み、問題の時間帯についてまとめると……
  • 10時48分:睡眠薬を飲む(選択肢で『飲まない』を選べば飲まない)
  • バスルームで風呂を沸かす
  • 部屋の方で物音がした気がする
  • 首だけ出して部屋の様子を窺うが誰もいない
  • もう一度物音がする
  • 部屋ちゃんと探し、部屋の外の様子も確認するが誰もいない
  • バスルームに戻る
  • 電灯消される
  • 睡眠薬を飲んでいない場合、誰かがバスルームに入ってくる気配を感じる
  • 10時57分:転移(悟の肉体は、こころ意識から胎児α意識へ)
この後は、睡眠薬を飲んだかどうかで変化するため、それぞれの場合について整理する。

まず、睡眠薬を飲んだ場合。
  • 11時19分:犬伏が部屋のカメラに映り、奇怪な行動をとる
  • 11時30分:転移(悟の肉体は、胎児α意識から悟意識へ)
  • 悟がバスタブの中から顔を出す
  • 11時33分:犬伏が部屋を出る
  • 11時37分:悟がバスルームから出てくる
そして睡眠薬を飲んでいない場合。
  • 悟がα人格のときの状況は一切不明
  • 11時30分:転移(悟の肉体は、胎児α意識から悟意識へ)
  • 悟、バスタブの中で溺死。このとき、誰かに後頭部を押さえつけられていた

 2つの疑問点
以上のまとめで、奇妙な点が2つ挙げられる。

1つ目は、こころ意識が2回聞いている物音。
物音は部屋のほうから聞こえているはずなのに、人の気配すらしなかったという。
監視カメラにも何も映っていないようである。

2つ目は、転移直前に電灯を消しバスルームに入ってきた人物のこと。
犬伏がカメラに映ったのは、この転移から約20分後であるのだ。
一体、この人物は誰なのだろうか。
ちなみに、睡眠薬を飲んでいる場合はその人物のことは書かれていないが、単に意識が朦朧としていたため気付かなかっただけだと思われる。


 物音の正体
1つ目の『物音の謎』のほうから考えていこう。

こころ意識は、物音は聞こえても、人の気配はまるで感じられなかったという。
そして、人が隠れそうなところは一通り探している。

だが、誰もいなかった。
物音は部屋から聞こえたはずなのに。

睡眠薬で朦朧としていない場合でもこの音はちゃんと聞いているので、聞き間違いという可能性は低いだろう。
ならば、ちゃんとした原因があるのだ。

誰かがノックした? 他の部屋の音が反響? 気圧の変化? 外の吹雪? 屋根の雪が落ちた?

様々な原因が考えられるが、もっとも可能性が大きいものがある。
それは、ネズミだ。

ネズミなら物音を立てても、人の気配がするはずはないのだ。人ではないのだから。
ネズミはスフィアの地下で目撃されているが、MAO阻害剤で瀕死に陥ったときにはスフィアの1階で目撃されている。このため、スフィア中を行動範囲にしていたと考えるのが自然だろう。


 転移直前の人物の正体
次は、2つ目の『転移直前の人物』について考えていこう。

そもそも監視カメラが部屋を映していれば、電灯を消した人物やバスルームに入ってきた人影についても映しているはずである。
それなのにそのような記述は一切見当たらない。

この原因として、一つ考えられることがある。
部屋に設置されていた監視カメラは、入口のドア付近や、バスルームのドア付近を映していなかった可能性があるのだ。

悟が監視カメラを見ていたとき、『(穂鳥が)フレームインする』という表現が用いられた。
もし監視カメラが入口のドアまできちんと映していたなら、このような表現を使うより、普通に『ドアが開いて入ってきた』と表現するのが自然だろう。

また、監視カメラのCGがバスルームのドアを一部映しているだけにとどまっていることや、部屋の構造よりカメラ1台では部屋の全体を映すことができないことも、その理由として考えられる。

ともかく、監視カメラは部屋の入口付近、バスルーム付近をほとんど映していなかった。
そう考えれば、監視カメラの疑問点は解決だ。

以上より、カメラがバスルームに入った人物を捉えたとしても、画面の隅にわずかに映る程度だったので、気付かなかった可能性は十分ある。
仮に気付いたとしても、その人物の体全体が映るとは考えられないので、それがこころだと思ってしまってもおかしくないだろう。


 溺死させようとした犯人の正体
以上を踏まえて、溺死させようとした犯人の正体を暴いていこう。

転移直前に誰かが部屋に入ってきて、電灯を消し、バスルームに入ってきた。
これは誰なのか?

それはおそらく、犬伏(穂鳥意識)である。
バスルームから出てきた後に、犬伏が部屋をうろつく様子がカメラに映っているので、彼女と考えるのがもっとも自然だ。

転移後、犬伏の肉体は胎児ωが支配する。

もしここで、睡眠薬を飲んでいたなら、意識が朦朧している悟の肉体はバスタブに寄りかかった状態のままであり、胎児ωに気付かれずに済むのだろう。
胎児ωは興味をなくし、そのままバスルームを出て、監視カメラに映り、奇行に走り、転移し意識が変わり、逃げるように部屋を出る。
悟の肉体は朦朧としたまま、寄りかかっているバスタブに頭を沈めてしまうのだろう。

だが、睡眠薬を飲まなかった場合、意識がハッキリしている悟の肉体は何らかのアクションをとり、胎児ωに気付かれて偶発的にバスタブに沈められてしまう。
悟の肉体は対抗するが、胎児ωにとってはそれが面白くてだろうか、その頭を何度もバスタブに押し付ける。
これを何度も繰り返されたことにより、悟は溺死してしまうのだろう。

と、大まかにはこんなところだろう。
以上のバスルームでの挙動はあくまで想像の範囲なので、他の可能性はいくらでも考えられる。

ちなみに、穂鳥が悟の部屋に来た理由は、自分と同じような境遇の悟に相談に来たか、鏡騒ぎのときになだめてくれた悟にお礼を言いに来たのだろう。
電灯を消したのは、男の人が裸でいると思ってパニくってやってしまったとか、そんなところだろう。
彼女なら十分あり得る、うんうん。


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