犬伏景子と
優希堂沙也香。
この二人には奇妙なまでの共通点がある。
まず、二人ともDIDであること。
しかも、二人とも殺人衝動のある人格を宿らせている模様。
血液型はどちらもAB型。
髪の色も両方とも黒だ。
二人の誕生日は異なっている。
だが、仮に沙也香が生きていたとすれば、彼女の年齢は犬伏景子とほぼ同じ。
もし、犬伏の誕生日がプロフィールとは違ったものだったら、この問題は解決される。
つまり、何が言いたいのかと言えば――
犬伏景子と優希堂沙也香は、肉体的には同一人物であるということ。
『犬伏景子=優希堂沙也香』には、もうひとつ大きな壁がある。
それは、犬伏景子は生きているが、優希堂沙也香は既に死んでいる、ということだ。
だが、この問題はシンプルな答えで説明がつく。
その答えは――
優希堂沙也香の死は、『優希堂沙也香という人格』の死。
こう説明すれば、誕生日が違うこと、そして名前すらも違うことに説明がつくだろう。
それでも国がちゃんと調査してしまえば、バレてしまう可能性もあるのだが、
ライプリヒ製薬の権力が影響すればその問題は解決される。
むしろ、彼女の人格の死すら、ライプリヒ製薬の人体実験が起こした可能性もあるのだ……。
本物の優希堂悟がライプリヒ製薬に就職した理由もそこにあるのかもしれない……。